アマゾンが発表した2025年第2四半期の決算によると、プライムデーの4日間のセール開始前の段階で、オンラインショッピングの利用者によりネットストアの売上が11%増加し、615億ドルに達しました。
この成長率は前年同期(5%)の2倍以上で、サードパーティーのセラー向けサービス収入も403億ドルに達し、同じく11%の成長を記録しました。
地域別では、北米の純売上高が900億ドルに達し、前年比9%増。為替の影響がある中でも、国際部門は現地通貨ベースで7%の成長を維持しました。
これらのデータは、アマゾンが単なる取引量に頼るビジネスモデルから、サービス品質を軸にユーザーの定着と再購入を促す方向へ転換していることを示しています。
越境ECセラーにとって、これは挑戦であると同時にチャンスでもあります。プラットフォームがサービス水準の基準を高める中で、優良セラーにはより多くの流入が期待されます。
01 越境EC消費者行動の変化と運営戦略の転換
消費パターンの根本的変化
注目すべきは、プライムデー前にもかかわらず11%の成長を達成したこと。これは、消費行動が「イベントドリブン」から「日常ニーズ主導」へ移行していることを示しています。
購入決定のリードタイムは45日から28日に短縮され、カテゴリーの嗜好も多様化。これまでの3C家電や家具から、美容・スポーツ・ペット用品などのニッチ分野へ広がっています。
アルゴリズムへの対応戦略
従来の価格競争やレビュー操作(架空注文)では、もはや新しいアルゴリズムには対応できません。
今後のアルゴリズムは、滞在時間、レビューの質、再購入率といった「リアルなユーザーインタラクション」を重視します。

今後の運営戦略への提言:
- ユーザーライフサイクル管理の構築:メールマーケティングやSNSで関係性を強化
- 商品ページの質の向上:詳細な使用ガイドや安心のアフターサポートを明示

- 多SKU構成:異なるニーズ層に対応
- 商品開発・サプライチェーン最適化への投資:品質・納期の安定を確保
02 越境ECサードパーティーサービス収入と競争構造
収入構造の分析
403億ドルという数字はインパクトがありますが、前年比成長率が前年と同じであることから、セラー間の競争は激化しているといえます。
収入の内訳を見ると、60%以上をFBAの配送手数料が占め、広告やサブスクリプションが続いています。アマゾンは「モノを売る場所」から「サービス提供プラットフォーム」への進化を図っています。
成功するセラーの特徴:
- ニッチ市場への集中
- 自社商品設計・開発力
- ブランドストーリーとユーザーコミュニティの構築
- 品質管理の徹底
- プラットフォームの機能とデータ活用に精通していること

03 高級ブランド参入による越境EC品質プラットフォームへの進化
Nikeの再参入、Marc Jacobsなどのラグジュアリーブランドの入店は、アマゾンが「何でも屋」から「品質生活プラットフォーム」への進化を目指している証です。
これにより、すべてのセラーが商品・サービスの品質向上を迫られます。
ラグジュアリーブランドの導入は、アマゾンのブランドイメージを高めると同時に、高所得層の消費者層の拡大にもつながっています。
越境ECセラーへの影響:
- 消費者の品質・デザイン・ブランドストーリーへの期待が急上昇
- 価格や機能だけでなく、ブランド感やUX、CSRも評価軸に
- 単なる商品販売ではなく、ブランド経営とエコシステム構築が重要に
04 関税政策とサプライチェーン戦略の転換
政策リスクへの対応
アマゾンCEO Jassy氏の「今のところ影響は見られないが、将来は不透明」という発言は、長期的なコスト構造の変化への警鐘です。
すでに業界全体でサプライチェーンの多元化が進んでいます。
- 低技術製品:東南アジアやメキシコなど低コスト地域への生産移管
- 高技術製品:品質維持しつつ代替供給元の探索
- 在庫戦略:分層的な在庫管理体系を推奨

コスト上昇対策:製品付加価値の向上
- 機能性と差別化設計の強化
- ブランド力構築により価格プレミアムの実現
- 調達規模と業務改善による単位コスト低減
- 高利益率の周辺商品やサービス開発で収益多角化
まとめ
越境ECビジネス成功のポイント:
- 差別化優位性と持続可能なビジネスモデルの構築が越境EC成功への道
- アマゾンQ2決算は615億ドルの成長を達成し、越境ECが次の進化段階に入ったことを示す
- 消費行動は「イベントドリブン」から「日常ニーズ主導」へ移行、購入リードタイムも短縮
- 新アルゴリズムは滞在時間、レビューの質、再購入率などリアルなインタラクションを重視
- サードパーティーサービス収入403億ドル達成も競争は激化、品質とサービスが差別化の鍵
- 高級ブランド参入により品質基準が上昇、ブランド経営とエコシステム構築が必須に
- 関税政策リスクに対し、サプライチェーン多元化と製品付加価値向上で対応
- 今後の競争軸は「プラットフォーム化」「ブランド化」「サービス化」の3つ
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