ここ数年、スマートペット機器市場は非常に盛り上がりを見せています。新規セラーが次々と参入している状況です。多くの企業が「ハードウェア競争」や「価格競争」に陥る中、Furboはまったく異なる道を歩んでいます。
彼らはペットカメラ一筋で事業を展開しています。カテゴリの拡大も価格競争も行いません。代わりに、「カメラ+サブスクリプション」という組み合わせを採用しました。その結果、2024年には1,000万ドル超のGMVを実現しています。また、顧客の継続率も非常に高いのです。

驚くべきことに、Furboの製品はわずか3つだけです。Furbo Mini、360°回転版、猫用モデルのみです。しかし、これらだけで長年Amazonペットカテゴリのトップを維持しています。Furboの成功の裏には何があるのでしょうか。以下、深く分析します。
1、ユーザーのリアルなペット不安を的確に捉える
創業のきっかけと市場調査
Furbo創業のきっかけは、創業者Maggie Cheungの「ペット不安」でした。
毎日外出するたびに、「家にいる犬は大丈夫だろうか?吠えていないか?部屋を荒らしていないか?」と不安になる日々。
この悩みを解決すべく、彼女とパートナーのVictor Changは小さな実験を行いました。カメラを設置し、Maggieが遠隔から呼びかけ、Victorがソファの後ろからおやつを投げる。犬の反応を見るというものでした。
この実験こそが、Furbo誕生の原点です。

市場ニーズの発見
その後、1,000人のペットオーナーを調査した結果、85%が同様の不安を抱えていることが判明。
Maggieは、「ペットとの分離不安は、実在する強いニーズだ」と確信しました。
Furboが他のペットブランドよりも突出している理由は、飼い主の「感情」を的確に捉えている点にあります。
特にZ世代、一人暮らし世帯、空の巣家庭など、ペットの様子に強い関心を持つユーザー層に刺さる製品設計がされています。
また、「不安・交流・見守り」という使用シーンは、SNSとの相性も抜群で、自然にバズるコンテンツへとつながります。
2、高頻度のインタラクションで利用習慣を形成
ペット市場の現状と可能性
アメリカでは、ペットはすでに「家族の一員」として扱われています。
2024年時点で、米国の66%(約8,690万世帯)がペットを飼育しており、うち33%がミレニアル世代、25%がX世代です。
この層は購買力が高く、継続課金にも抵抗がありません。

画像:Google
ペットカメラの3つの主要機能
Furboは以下のような3つの使用シーンに特化して機能を設計しています:
- リモート給餌:
出勤中でもスマホ操作でおやつを発射。犬が飛びつく姿に癒され、何度でもアプリを開きたくなる導線に。
- 双方向通話+ナイトビジョン:
リアルタイムでペットに話しかけたり、問題行動を制止。夜間モードで暗闇でも様子を確認可能。
- AI行動検知+健康警告:
異常行動(長時間の吠えや静止など)を自動通知。受動的な「記録」から能動的な「見守り」へと進化しています。

サブスクリプションモデルの導入
特に「おやつ発射」機能は、アプリ利用の習慣化を加速させる中核機能。
ここに月額6.99ドルのサブスク「Furbo Nanny」が連動し、「イベント再生」「健康レポート」「吠え履歴」などを提供。
「昨日より30%多く吠えている」といった通知が、飼い主の関与頻度を自然に増やします。
3、利用シーンを「良質なコンテンツ」に転換
インフルエンサーマーケティング戦略
Furboは「コンテンツ戦略」においても巧妙です。インフルエンサーマーケを主軸に据えています。同時に、UGCの自然拡散を促進しています。製品の利用自体を「日常の共有」に変換しています。
インフルエンサー投稿は「日記調」で、広告臭がありません。例えば、YouTubeのBijou & Sciarpina氏とのコラボ動画があります。Furboはあくまで「日常の中のツール」として登場します。機能説明は一切ありません。それでも視聴者は強い没入感を得られます。
UGC自動拡散の仕組み
「15秒自動回放」機能により、TikTokやInstagram Reelsに簡単投稿。
「外出中、犬が何をしているか見てみた」というsylvieandshiloh氏の動画は200万回以上再生。
pipergirl_thegsd氏の「破壊行動に不安を感じる」という投稿は4,600万いいね、再生2,000万回超。
ハッシュタグ「#Furbo」関連動画は現在4万本以上、トータルいいね数は1,000万超。

Furboの公式TikTokアカウントもフォロワー9万人を突破。

4、信頼の先にある「定着」
Amazonレビューによる信頼構築
ユーザーはバズ動画を見ただけでは即購入しません。Furboの真の巧みさは、購入後に「心の定着」を生み出している点にあります。
「Furbo レビュー」を検索すると、最初にAmazonの商品ページが表示されます。2万件以上のレビュー、4.6の高評価があります。写真付きの実ユーザー投稿がズラリと並んでいます。ここで最終的な”購買の背中押し”が行われます。
社会貢献とコミュニティ運営
さらにFurboは2つの方法でユーザーの信頼を深めています:
- 購入=社会貢献:
「One Furbo = $1」キャンペーンにより、1台売れるたびに動物保護団体へ1ドルを寄付。累計5,400匹以上の動物を救済。
- Facebookコミュニティの運営:
「Furbo Pet Parents」という非公開グループを運営。
「ナイトビジョンショットチャレンジ」や「ペット健康打刻」などの企画を開催。
投稿すればサブスク無料券やアクセサリーがもらえる。
コミュニティ内のUGC月成長率は18%、業界平均を大きく上回ります。
まとめ
ペットカメラFurboの成功戦略5つのポイント:
- 創業者の実体験から生まれた「ペット分離不安」という感情への共鳴からスタート
- おやつ発射機能など高頻度の利用シーンでアプリ習慣化を実現
- インフルエンサーとUGCのコンテンツ連携で自然な拡散を促進
- Amazon2万件超のレビューと4.6評価で購買転換率を向上
- 動物保護団体への寄付とFacebookコミュニティで顧客定着を強化
- わずか3つのSKUで年間1,000万ドル超のGMVを達成
- 月額6.99ドルのサブスクモデル「Furbo Nanny」で継続収益を確保
- ペットカメラ市場で長年Amazonカテゴリトップを維持する圧倒的地位を確立
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