はじめに
わずか数ドルの商品をどこまで進化させることができるのか。製品革新の力で、Olightはこの問いに驚くべき答えを示しました。
1、小型商品の製品革新による価値向上戦略
Amazon市場での存在感
Ankerなどのブランドと比べると、Olightは海外市場では控えめな存在に見えます。しかし、同社は「ありふれた」製品である懐中電灯を巧みに使いこなし、年間売上12億元(日本円:250億円くらい)という優れた業績を達成し、IPOの準備まで進めています。
「OLIGHT」というブランド名でAmazonを検索すると、同ブランドが販売している商品が877点あります。結果の上位に表示される商品を見ても、レビュー数が決して少なくなく、同価格帯の製品と比較してもかなりの数を誇っています。多くのリスティングには数千件、さらには数万件のレビューがついています。
主力製品の市場実績
懐中電灯を主に扱っているとはいえ、Olightのターゲットはアウトドア愛好者であり、製品は異なるアウトドアニーズに応じて細かく分かれています。そのため、製品の価格は数ドルから100ドルを超えるものまで様々です。例えば、9.99ドルの充電ケーブルもあれば、289ドルのアウトドア用懐中電灯もあります。
OlightのEDC懐中電灯の一例として、Amazonでは17.99ドルで販売されており、プラットフォーム上では1.45万件以上のレビューを獲得し、平均星評価は4.6星です。
画像:アマゾンアメリカ-セラースプライト-拡張機能
ランキングから見ると、前述のリスティングはAmazonの「Tactical Flashlights(戦術用懐中電灯)」カテゴリーで第19位にランクインしています。また、同カテゴリーのベストセラーランキング(BSR)TOP50には、Olightの製品がさらに6つランクインしており、それぞれ14位、16位、29位、33位、42位、44位に位置しています。
14位にランクインしているのは、OlightのS 800レールマウント武器ライトで、価格は129.95ドルです。この製品はリリース以来、レビューが4000件近く寄せられ、評価は4.7星という高評価を得ています。
さらに、Olightの新製品の中には、Amazonで1ヶ月に1000件以上販売されている商品も少なくありません。
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例えば、8月には99.99ドルのArkfeld Proや29.99ドルのEDC懐中電灯の月間販売数が2000件を超え、19.99ドルの懐中電灯とスマートナイトライトの月間販売数もそれぞれ1000件以上に達しました。特にスマートナイトライトはAmazonの「Night-Lights(夜灯)」カテゴリーのNew Release(新品リリース)ランキングで1位に輝きました。
製品革新の具体例:Arkfeld Pro
現在最も売れているのは、Arkfeld Proで、そのデザインは従来の円筒形の懐中電灯を廃し、長方形に変更したことで注目を集めています。性能面でも、1300ルーメンの白色光、900mWの紫外線、3Rクラスの緑色レーザーを搭載するなど、機能性が非常に優れています。これまでのデータによれば、今年の前7ヶ月間で、この製品はAmazonで2655.4万ドルの売上を記録しました。
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言うまでもなく、ブランドの成長は製品自体に依存します。Olightは、長年にわたり技術革新に力を注ぎ、最先端のLED技術を採用し、明るさやバッテリー寿命を向上させ、さらにスマートコントロールシステムを導入しています。また、製品の使用シーンは主にアウトドアに特化しており、防水・防振などの機能にも重点を置いています。
このような製品へのこだわりこそが、Olightが消費者から信頼される理由となっています。
2、15年にわたる製品革新の歴史
革新的な技術開発の軌跡
• 2008年:業界初のデュアルテールスイッチを搭載し、瞬時にストロボモードに移行できる懐中電灯を開発。
• 2010年:世界初、2000ルーメンの明るさを持つ単LED懐中電灯「SR90」を市場に投入。
• 2011年:業界初の一体型照明ツール「S80」を発表。
• 2012年:射程距離1000メートルの世界初の懐中電灯「SR95S UT」を発表。
• 2014年:Batonシリーズ初のマグネット充電対応懐中電灯「S10R」をリリース。
• 2015年:Olight初の武器用ライト「PL-1」をリリース。
• 2016年:多用途LED照明ツール「H1」を発表。
• 2017年:高性能充電式武器用ライト「PL-Mini」を発売。
• 2018年:業界革新をリードするタクティカル懐中電灯「Warrior」を発表。
• 2019年:世界初のピストルとライフル兼用の武器ライト「PL-Pro」を発売。
• 2020年:プロ仕様のライフル用ライト「Odin」シリーズを発表。
• 2022年:中国のアウトドアモバイル照明業界で初めてCNAS実験室の認定を受けるブランドに。
技術革新への継続的な投資
- LED技術の最先端研究
- スマートコントロールシステムの開発
- アウトドア特化型機能の強化
このような製品開発力の向上により、Olightは海外市場での展開を急速に進めています。
3、急成長を支えた事業戦略
財務実績
Olightのデータによると、同社は2021年と2023年にそれぞれA、Bラウンドの資金調達を行い、両ラウンドのリード投資家は深圳高新投(Shenzhen High-Tech Investment)です。総資金調達額は公表されていませんが、2023年時点でOlightの年間収益は12億元(約240億円)を超え、そのうち海外市場の占有率は99%に達しています。
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Olight(傲雷)は、製品の爆発的な売れ行きと海外市場での成長を背景に、IPOを目指しています。中国証券監視委員会の情報によると、昨年11月にOlightの上場準備が公表され、指導機関は中金国際(CICC)です。今年7月時点で、その準備作業は第3段階まで進展しています。
グローバル展開戦略
Olightは2007年に設立され、技術革新を主軸とした世界的な移動照明ブランドを目指してきました。母会社の傲雷は、中国の主要な照明産業地帯である中山に拠点を置いています。この十数年にわたる発展の中で、Olightは携帯型照明を主力とし、アウトドア用懐中電灯、EDC(Everyday Carry)懐中電灯、戦術用ライト、雰囲気灯、ヘッドランプ、自転車用ライト、そしてその周辺アクセサリなど幅広い製品ラインナップを展開しています。ターゲット消費者は主にアウトドア愛好者です。
21世紀初頭に多くの中国企業が直面したように、Olightも初期にはブランドを設立したものの、代理店を通じて海外市場に参入していました。しかし、この方式ではOlightの製品はあまり大きな反響を得られず、その後自ら運営チームを編成し、ブランドを直接海外展開する決断を下しました。
2015年、OlightはAmazonを通じてB2C分野に進出し、クロスボーダーEC事業を正式にスタートしました。しかし当初、欧州市場では高い販売実績を上げていたものの、米国市場では成果が見られず、Amazonなどの大手プラットフォームに依存しても目立った成功は収められませんでした。このため、Olightはブランドの強化と独自のウェブサイトの構築を決断し、米国に子会社を設立してブランド独立サイトを立ち上げました。
2016年、独立サイトが稼働してからわずか数日でOlightは10万ドルの注文を獲得し、ついに海外市場への扉が開かれました。この成功により、同年のOlightの年間収益は1億元を突破し、億規模のブランドへと成長しました。
Olightは、2022年の「ブラックフライデー」期間中、Olightは13の海外市場で独立サイトを運営し、総売上は1100万ドルに達しました。これが全体の売上の半分以上を占めており、非常に優れた成果を収めています。
市場開拓の変遷
Olightは、AmazonやeBay、独立サイトといったオンラインチャネルを主軸としながら、海外市場でのブランドイメージを着実に強化しています。同時に、代理店との協力も維持し、これによりオフライン市場も拡大しています。オンラインとオフラインの二重戦略により、Olightはブランド設立から10年足らずで収益を33倍に増加させました。
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2023年、Olightの年間収益は12億元(日本円:250億円くらい)を突破し、そのうち海外販売が99%を占め、約11.95億元に達しています。現在、Olightの市場はアメリカ、イギリス、ドイツ、オーストラリア、日本など、世界120以上の国と地域に広がっています。
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まとめ
・継続的な製品革新が市場成功の鍵
・技術開発への積極投資が競争優位性を確立
・マルチチャネル戦略による市場展開の成功
・独自ECサイトの重要性
・グローバル市場での強固なブランド構築
・製品品質とユーザー評価の相乗効果
・価格帯の戦略的設定による市場拡大
・オンライン・オフライン統合による成長
・継続的な製品ラインナップの拡充
・顧客ニーズに応じた製品開発の重要性
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